月極域探査機(LUPEX)プロジェクト

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近年、観測データの解析結果から月極域に水の存在可能性が示唆されています.JAXAでは月の水資源が将来の持続的な宇宙探査活動に利用可能か判断するために、水の量と質に関するデータを取得することを目的とした、インド宇宙研究機関(ISRO)等との国際協働プロジェクトを計画しています。

  • 量を調べる:既存の観測データから水の存在が予想されている地点において、その場観測により水(H₂O)の量に関する実際のデータ(グラウンドトルースデータ)を取得することです。
  • 質を調べる:月極域におけるその場観測によって水の分布、状態、形態等を明らかにすることです。

また、このミッションでは、将来の月面活動に必要な「移動」「越夜」「掘削」等の重力天体表面探査に関する技術の獲得も目指しています。

月面南極域の日照シミュレーション

月の北極や南極では太陽高度が低いため、クレータの内部などの周囲より標高の低い場所に長い時間日の当たらない「永久影」と呼ばれる領域が存在します。
これらの場所では、水が昇華せずに月表面近くに残っている可能性が高いことがこれまでの観測データにより分かってきました。しかし、水の具体的な量や分布、またどのような形態で存在しているかはまだ謎のままです。

月極域探査機(LUPEX)の概要

このミッションでは、水の存在有無を確認するだけでなく、水がどれだけの量、どのような分布で、どのような状態で存在するのかを調べます。
また、月の環境との関係を知ることにより、どのようにして今の状態になったかを解明するための知見を得ることも目的としています。

打上げ年度 2025年度以降〜
打上げロケット H3ロケット
投入軌道 長楕円地球周回軌道
打上時質量 約6.5t〜
ペイロード質量 350kg〜
運用期間 着陸後3.5か月以上
着陸地点 月の南極域
主要ミッション機器
(【】内は担当機関)
●【JAXA】水資源分析計(REIWA)
 REIWAは以下の機器から構成される。とりまとめはJAXA。
 - 【JAXA】熱重量分析計(LTGA)
 - 【JAXA】多反射リフレクトロン型TOF質量分析計(TRITON)
 - 【JAXA】レーザー微量水分・同位体分析装置(ADORE)
 - 【ISRO】ISRO試料分析装置(ISAP)
● 【JAXA】近赤外画像分光装置(ALIS)
● 【NASA】中性子検出器(NS)
● 【ISRO】地中レーダ(GPR)
● 【ESA】表層分圧計(EMS-L)
● 【ISRO】中間赤外画像分光装置(MIR)
● 【ISRO】誘導率・熱物性計(PRATHIMA)
(※黄字からは、各ウェブサイトへと移動できます。)

調査の流れ

環境や地質が特徴的な探査領域と、観測地点(ウェイポイント)を事前に選定し、探査領域近くの⻑期⽇照地帯に着陸して、ローバを展開します。
ローバで⾛⾏しながらウェイポイント周辺で表面および地下の観測を行い、⽔の存在可能性が高い領域を識別します。
さらに、識別された⽔の存在可能性が高い地点で表層から地下1.5 mまでの掘削・試料採取および表層分圧の計測を実施します。採取された試料は加熱され揮発性物質を気化させるとともに重量の減少が計測されます。
また、揮発したガスについては含まれる化学種の同定と相対量の計測がされます。
これらの観測から水の量、分布、形態等に関するデータを取得します。

⽉極域探査機(LUPEX)の期待される成果

資源探査の観点: 月の水資源の存在量・場所等の重要データの取得により、将来の持続的な宇宙探査活動に向けた水利用の可否判断が可能となる。
技術的観点: 小型着陸実証機(SLIM)で獲得する重力天体着陸技術の活用・発展、重力天体表面探査技術の実証により、自在な探査能力を獲得する。
その他の観点:Artemis計画へ貢献する。

⽉極域探査機(LUPEX)の検討の経緯

  • 2020年1⽉  JAXA内に「⽉極域探査機プリプロジェクトチーム」を発⾜
  • 2022年2⽉  JAXA内に「⽉極域探査機プロジェクトチーム」を発⾜
  • 2022年7⽉  文部科学省第67回宇宙開発利用部会にて月極域探査機(LUPEX)プロジェクト移行審査の結果について審議了承される。